言い訳

駄文ってことは知ってるから許してください

夏だね

 

 ここ数日すっかり昼夜が逆転している。夜は懸案事項ばかり思い出されてずっと不安をごまかそうとスマホに縋り付いて、夜明けが近づきカーテンの隙間から青い光が差し込みだすと青い!!ヤッホーーーーー!!!といってスマホを放り投げ喜び勇んで家を抜け出す。そして本当の朝から逃げるように日が昇り切る前に家に滑り込んで眠りにつく。

 初夏の明け方の外は、ひんやりと涼しくて薄明るくて雑音がなくて青い。ほんとうにきもちのいい世界だ。どれだけダサいTシャツを着てふらふら歩いても、毛が伸び放題の手足を放り出して振り回しても、見咎めるものはいない。囀る小鳥はわたしが近づくと飛び去っていくが、わたしを評価したりしない。久々に自由な身体を手に入れる。クレマチスオダマキ、ジキタリス、記憶の中のジキタリスの画によく似た花、そもそもあれはジキタリスなのか、てかジキタリスって文字列であってる?、とにかく初夏の花々。クレマチスは今時期咲く花の中で一番好きだ。花は色は白かほんの少し褪せた紫か薄ピンクで、花芯はかわいらしい黄色、でかいけどちょっと頼りない花びら、蔓が繊細で、趣味のいい緑の葉をしている。初夏の明け方みたいな花だ。実家の周りには多くの植物が植えられていて、短い花々の季節が過ぎ去って全て雪に埋もれてしまうまで、鮮やかに繁っている。2、3年前、ずっとずっと手入れしていたおばあちゃんが去って、すっかり荒れてしまったが、雑草の中で花は変わらず綺麗に咲いているのだった。そろそろ空の青も別の色と混じりだす。陽がまた少し傾いて明け方と朝の境目まできたときの空は、自分がもっているオレンジからピンクの絵の具の中で一等好きな色選んでのせて薄紫を刷いた白の水彩紙みたいな色をしている。山々は霧に霞み輪郭を曖昧にして、教科書の枕草子のページの中はきっとこんな世界だろう。帰ってきて、アパートの階段の開けた踊り場で町を振り返ってみたら、飛ぼうと、すごく自然に思った。

 

 一日の終わり、生の合間、唯一楽しいとき。

 

 眩しい朝がやってくる前に寝てしまおう。